2. 句作りの練習
ここでは、詩語表を使って七言絶句一句の句作りを練習してみましょう。 まず、一句を作るときは、下から上に作っていくのが基本です。 すなわち、下の三字をとり、次にその上の二字をとり、最後に先頭の二字をとります。 では、「○○●●●○○」の平仄式を使って実際に一句作ってみましょう。 まず、下三字を詩語表の「●○○」グループから、適当なものを一つ選びます。 ここでは、東韻の「●○○」のグループから「紫陽紅」をとることにします。
- ●○◎
- 紫陽紅 -- 紫陽紅なり
つぎに、その上の二字を詩語表から選ぶわけですが、 平仄式から「●●」のグループから詩語を選択することは容易に想像がつくと思います。 このとき、「一三五不論」の規則から「○●」のグループも対象になることに注意します。 ここでは、「雨後」をとってみます。
- ●● ●○◎
- 雨後 紫陽紅 -- 雨後 紫陽紅なり
こうして、まずは吟味してみます。「雨後、 紫陽紅なり」、「雨降りの後、紫陽花が紅く咲いている。」、何とか意味は通じるようです。 では、最後に、先頭の二字を平仄式と「一三五不論」の規則に従って、 「○○」と「●○」のグループからとることにします。ここでは、「軒頭」をとることにしましょう。
- ○○ ●● ●○◎
- 軒頭 雨後 紫陽紅 -- 軒頭 雨後 紫陽紅なり
これで、一句できたことになります。しかし、これではただ詩語を並べただけのことであり、面白みのある句ではありません。 そこで、「紫陽紅」を活かすためには、この「紅」の色が鮮明になるように、 あるいは紫陽花が我を慰めるように作るといった「構想」が必要になります。たとえば、
- ○○ ○● ●○◎
- 窓前 苔緑 紫陽紅 -- 窓前 苔は緑に 紫陽紅なり
- ●○ ○● ●○◎
- 坐軒 猶愛 紫陽紅 -- 軒に坐し 猶愛す 紫陽紅なるを
などのように幾つか構想を変えて句作りをしてみます。 このとき、「坐軒」の語が詩語表にないとして、代わりに「坐レ.....」の語が詩語表にあり、 「.....に坐す」と読むことがわかれば、「坐軒」という語を「創作」できます。 詩語表に慣れれば、このように詩語表の中にある語を活用していくらでも詩語を増やしていくことができます。 つぎは、斉韻を使って「●●○○●●○」の平仄式の句を作ってみましょう。 まず、斉韻の●●○のグループから「水満堤」をとることにします。
- ●●◎
- 水満堤 -- 水堤に満つ
つぎに上の二字を「未晴」としてみます。これなども詩語表にない場合、「未霽」の語があれば、それから転用して作ることができます。
- ●○ ●●◎
- 未晴 水満堤 -- 未だ晴れず 水堤に満つ
意味は通じているのでこれで良いようですが、実は大きな過ちを犯しています。それは、
- 孤平不許
ということです。すなわち、基礎講座「7. その他の規約」で説明したように、 四字目が平でその前後が仄となるものを「孤平」といい、これは許されないのです。 では、どうすればよいでしょうか。まず一つ目の方法は、二字を○○のグループのみからとることです。
- ○○ ●●◎
- 梅霖 水満堤 -- 梅霖 水堤に満つ
また、別の方法としては、「一三五不論」の規則に従って、下の三字を「○●○」の語に変えることです。
- ●○ ○●◎
- 未晴 煙満堤 -- 未だ晴れず 煙堤に満つ
では、最後に先頭の二字を「●●」、「○●」のグループからとりましょう。
- ○● ○○ ●●◎
- 連日 梅霖 水満堤 -- 連日の 梅霖 水堤に満つ
- ●● ●○ ○●◎
- 密雨 未晴 煙満堤 -- 密雨 未だ晴れず 煙堤に満つ
これまでの句はすべて、起承結句に使う韻を踏む句でしたが、最後に韻を踏まない転句を作る練習をしてみましょう。 平仄式の「●●○○○●●」の場合、下の三字は「●○●」でも許されるので、 「○○●」のグループのうち「●○●」のものは使えることになります。では、まず「檐溜下」をとることにします。
- ○●●
- 檐溜下 -- 檐溜の下
つぎに、○○、●○のグループから二字をとります。ここでは、「孤斟」をとってみましょう。
- ○○ ○●●
- 孤斟 檐溜下 -- 孤斟 檐溜の下
そして最後に●●、○●のグループから二字をとります。「遣悶」をとることにします。
- ●● ○○ ○●●
- 遣悶 孤斟 檐溜下 -- 遣悶 孤斟 檐溜の下
では、つぎに「○○●●○○●」の場合を作ってみましょう。まず、「無人訪」をとることにします。
- ○○●
- 無人訪 -- 人の訪う無し
つぎに「独酌」、「閑吟」とそれぞれ選んだとします。
- ○○ ●● ○○●
- 閑吟 独酌 無人訪 -- 閑吟 独酌 人の訪う無し
このようにして、まずいくつかの句作りの練習をしてみるとよいでしょう。 そして一句が何とか作れるようになったら、つぎに述べる句作りの順序に従って作詩していくとよいでしょう。
